K-TUNES RACING

2020.8.8-9 富士スピードウェイまだまだ未知の「新しい靴」に苦しみ
チーム史上最悪の23位に終わる

苦戦を強いられた開幕戦から3週間、K-tunes RacingはSUPER GT第2戦を迎えていた。そのステージは開幕戦と同じ富士スピードウェイ。

大きなミスもなく、完走したものの、11位という結果に終わった開幕戦。それから時間もなく、同じサーキットとなれば、結果も似たようなものになりやすい。いや、冷静に判断すれば、開幕戦ゆえのトラブルによって順位を落としてしまったライバルたちが、本来のポジションを取り戻すため、むしろ結果が悪くなる可能性が高い。
しかし今回は、別の要件が大きく変っていた。それは天気だ。梅雨空の中、涼しかった開幕戦に対して、梅雨が開けて気温は上昇し、夏の日差しがサーキットを強く照らし、路面温度も高くなっていた。温度が高くなった状況の中で、走りがどう変化するのか?温度が高いほうがダンロップタイヤにマッチし、ライバルよりも優位になる可能性もある。

チームにとって大きなトピックスは、阪口晴南選手が#39 TGRチームSARDからGT500クラスへデビューすることだった。感染症予防のため出入国が制限されているためレギュラードライバーのヘイキ・コバライネン選手が日本入国できず、ピンチヒッターとして中山雄一選手とコンビを組むことになったのだ。
そのため脇阪薫一選手が、新田守男選手とコンビを組むことになった。昨年までSUPER GTに参戦していたベテランドライバーであり、実績はもちろん、即戦力としてレースに望むことができる。ただし、脇阪薫一選手がLEXUS RC F GT3のステアリングを握るのは、レースウィークの土曜日まで待たなければならず、その午後には予選というスケジュールになってしまう。

だが3週間ぶりの富士スピードウェイは、K-tunes Racingに対して冷たかった。土曜日の午前中に行われた公式練習で、30台中27位のタイムを記録。トップタイムに対して2秒以上のタイム差は、かなり深刻な状況であることを示していた。

予選Q1、新田守男選手が担当。ゆっくりとタイヤを温め、タイムアタックに望んだものの、タイムは伸びない。公式練習よりも0.9秒のタイムアップを果たしたものの、同じグループのトップタイムよりは1.7秒も差があり、結局予選Q1突破には0.4秒ほど届かなかった。
最終的な予選順位は26位。この結果は、昨年第5戦富士での25位を上回って、チーム史上最悪の予選結果となった。公式練習の結果からすれば、当然の結果といえなくもない。
この第2戦ではレギュレーションの変更があり、レース中のタイヤ4本の交換が全車義務化された。タイヤ無交換でピットタイムを短縮する作戦が消え、マシンが重量級なのでタイヤ4本交換が必須なK-tunes Racingにとってはメリットもある。しかし同時に、無交換のマシンがレース終盤にタイムを急激に落とす、といったドラマも起きない。
コース上での速さで勝負する、という要素が強まっているわけで、つまりラップタイム、レースペースが速くなければ上位進出は難しくなる。

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2020.8.8-9 富士スピードウェイまだまだ未知の「新しい靴」に苦しみ
チーム史上最悪の23位に終わる

決勝レースが行われる日曜日、気温は前日ほどは上昇していない。後方からスタートするK-tunes Racingが上位入賞を目指して、採れる戦略は限られている。2人のドライバーが均等に半分ずつ走行するのがリスクが少なく、最も一般的な戦略となる。しかし同じ戦略で望めばラップタイムで負けている以上、前へ出ること、上位入賞することは難しい。

上位入賞を目指すには、早めにピット作業を行う戦略となる。ピット作業をすると順位を落とし、上位陣からのタイム差も大きくなる。しかし、彼らがまだピット作業をしていない時点でセーフティカーが入ると、その1分以上のタイム差はゼロに近くなる可能性がある。
ただし、そのためには長くなるピット作業後の周回数を、必要十分な耐久性を持ち、性能が高いタイヤを選択する必要がある。しかしK-tunes Racingには、まだダンロップタイヤのデータが不足しており、それを見極めることはできない。

新田守男選手がステアリングを握り、レースはスタートした。すぐ後方でスタートしたマシンがジャンプスタートで追い越した後、前方で多少の混乱があった。リスクを警戒した新田守男選手はややスペースを空け、先行車を追う形でレースが進んでいった。
しかし新田守男選手のペースが上がらない。前のマシンとの差がジリジリと開いていく。ある程度、予想されていたとはいえ、苦しい展開だ。
早いタイミングでピット作業&ドライバー交代を狙うチームは、19周目から少しずつ現れ始めた。しかしK-tunes Racingの96号車はコース上に留まったまま、走行を続けている。早くピット作業を行うと、その後の周回数が多くなり、タイヤの耐久性が難しい状況になる可能性もある。

結局96号車がピットに向かったのは24周目になってから。ピンチヒッターの脇阪薫一選手へとドライバー交代したのだが、ここで給油のトラブルが出てしまい、タイムロス。いい形でコースへと戻すことはできなかった。
土曜日午前中に初めて乗り込んだLEXUS RC F GT3だが、さすがはベテラン脇阪薫一選手である。GT500マシンのオーバーテイクを上手くこなし、リスキーな走りをする若手ドライバーを上手く避け、周回数を重ねていく。
しかし、新田守男選手とはタイヤのスペックが違うとはいえ、タイムが伸びないのは同じ。前のマシンを追いかけるほどのペースは持っていなかった。さらに付け加えると、今回のレースでは、いくつかのアクシデントはあったもののセーフティカーが入らず、波瀾含みの展開にならなかった。

チェッカーフラッグを受け、23位でフィニッシュした。これはチーム史上で最も悪い順位であり、トップの#2 SYNTIUMアップルLOTUSに対して、2周遅れという惨敗だった。
しかし開幕戦同様、しっかりと完走できたことは、新しい靴=ダンロップタイヤを知るために、データを収拾するために、大きなプラスになることは間違いない。
トンネルの出口まで、どれほどの距離なのかは誰にも判らない。しかし、その距離を縮める力があるのか?
K-tunes Racingは超えるべき大きな山の前に居る。

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