K-TUNES RACING

2019.4.13-14 岡山国際サーキット若き才能とベテランの力
その競演で手にした勝利

岡山トヨペットとK-tunes Racingにとって2年目のSUPER GTは、昨年と同じ地元岡山国際サーキットで始まった。チームにとっての変化は、岡山トヨペットの社員メカニックが増員されたこと、そして阪口晴南選手が新たに加入したことだった。

土曜日の午前中に行われたプラクティス。新田守男選手がステアリングを握り、セットアップを進めていった。なかなか阪口晴南選手の出番は来なかった。SUPER GTではレースウィークの走行機会が少なく、プラクティスは土曜日の予選前に1度だけ。それだけに気温や路面温度などを含めて、限られた時間で効率的に微調整する必要がある。1シーズンをLEXUS RC F GT3で戦い、ベテランでもある新田守男選手が担う必要があった。
阪口晴南選手がマシンに乗り込むチャンスは、セッション終盤にやってきた。日本最高峰のツーリングカーレースという檜舞台に、19歳の若いチャレンジャーが上がることになった。すでに残り時間は30分ほどしかない。
だが、そんな記念すべき時間は水を刺されてしまった。2度の赤旗中断によって、阪口晴南選手がしっかりと走ることができたのは、セッションの最後に設定されたGT300クラス占有時間になってから。だが、そのわずかな時間でも有効だった。その大きな要素のひとつは、マシンのセットアップが完璧ではないこと、そして、その情報を新田守男選手と共用できたことだった。

午後に行われた予選は2組に分けて実施。K-tunes RacingはB組で、8番手までに入らなければQ1でノックアウトされてしまう。そのQ1を担ったのは新田守男選手。低い気温と路面温度で作動しないタイヤを慎重に温めて、いよいよタイムアタックに入った。だがタイムは上がらない。2度目のタイムアタックで出したのは1分26秒056。その時点でQ2進出ギリギリの8番手で、すでに予選アタックは終了。まだタイムを出しそうなマシンが何台か残っていて、チーム全体に緊張感が拡がる。
そのうちの一台、#18UPGARAGE NSX GT3の小林崇志選手が最後にコントロールラインを通過。そのタイムは1分26秒061。わずか0秒006の差で、K-tunes Racingは予選Q2への進出を果たした。緊張感は一気に安堵へと、チームの空気は一瞬で変わった。

だがまだ戦いは終わっていない。Q2までのわずかな時間、新田守男選手と影山正彦チーム監督、そして成澤エンジニアがセットアップの見直しをしていく。SUPER GT初の予選でルーキードライバーが十分なパフォーマンスが発揮できるように、ベテランたちがマシンをケアしていく。B組トップタイムをマークした#55ARTA NSX GT3に対して、0秒609という差は大きく、そのままでは勝負にならない。
GT500クラスのQ1を間に挟み、いよいよ予選Q2がスタートした。16台のマシンがポールポジションを争う。ゆっくりとK-tunes Racingのマシンがピットレーンを進んでいく。いよいよ阪口晴南選手のデビューである。
果たしてセットアップの修正は成功したのか?「(1分)25秒5くらいは出るかな?25秒2くらいまで行けば、いいね」と新田守男選手は予想タイムを口にした。先にタイムアタックをしたのは#55ARTA NSX GT3の福住仁嶺選手。SUPER GTのデビューレースで、フォーミュラマシンで活躍してきた若手ドライバーであり、まるで阪口晴南選手と同じ境遇となる。そのタイムは2分24秒889。GT300クラスのコースレコードだ。

続いてタイムアタックに入っていた阪口晴南選手も、セクタータイムは良い。そしてコントロールラインを通過、そのタイムは2分24秒905。わずか0秒016差。予想を上回るコースレコードで、初の予選Q2を2位で終えた。
ピットに戻ってきた阪口晴南選手を、チームが迎える。末長一範チーム代表をはじめ、歓喜の中で握手が交わされる。しかし阪口晴南選手の表情は、それほど喜んでいるようには見えない。その表情を影山正彦チーム監督はこう解説してくれた。「ドライバーが、ああいう表情の時は、まだ行けたんですよ」。初の予選を2位で終えた喜びよりも、手にできたはずのポールポジションを逃した落胆が、阪口晴南選手の心を支配していた?
コース上での借りは、コース上で返すしかない。

しかし、そのチャンスは、岡山国際サーキットではやって来なかった。

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2019.4.13-14 岡山国際サーキット若き才能とベテランの力
その競演で手にした勝利

雨の中の決勝レース、2番手スタートの#96K-tunes Racingをドライブした新田守男選手は、レース開始直後から#55ARTA NSX GT3の高木真一選手を激しくプッシュし、並びかける。だがオーバーテイクには至らない。

激しい攻防の中、他車のクラッシュによりセーフティカーが導入され、暫し中断。そして再スタート直後、新田守男選手は素早く仕掛け、クリーンなオーバーテイクが成立、トップに立つ。
その後、雨はその量を変化させながら、ドライバーたちを翻弄していく。クラッシュやコースアウトも散見される。コースの場所によって滑りやすさが異なる難しいコンディションの中、新田守男選手はベテランらしい走りでトップをキープし続ける。そのペースは少しずつ#55ARTA NSX GT3を引き離していく。そこに不安定さは微塵も感じることはなかった。

セーフティカーや赤旗中断を経て、最終的には30周でレースは終了となる。ドライバー交代もなく、K-tunes Racingは2019年の開幕戦を、通算3度目の優勝で終えることになった。阪口晴南選手へバトンが渡されることはなかった。
2019年、K-tunes RacingのSUPER GTは素晴らしい勝利によって幕開けした。それは若い力によって奪い取った予選2位を、トップチェッカーにつなげたベテランの走りによって、もたらされた結果だった。

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