K-TUNES RACING

2019.8.3-4 富士スピードウェイ攻めた戦略でチャレンジしたものの
勝機を掴むことはできずに15位に終わる

60kgのウエイトハンデ、マシンにとって苦手な富士スピードウェイ、そして高い気温によるエンジンパワーの喪失。K-tunes Racingにとって、AUTOBACS SUPER GT 2019 第5戦は、当初から厳しい戦いが予想された。残念なことに、ポジティブな情報はほとんどない。結果は出なかったものの第2戦富士で、レースペースはトップグループと同等だったことは唯一の光明だったが、あの時点でのウエイトハンデは20kgに過ぎず、そこに40kgが上乗せされてしまっている。

残された勝機は、他力本願である。
レースは勝負事であり、実力以外の要素が結果を左右する場合もある。それは、例えば突然の雨だったり、タイミングの良いセーフティカーだったり、つまり順当なレース展開ではない状況が生まれ、それが大きなメリットとして受け取ることができれば上位入賞が可能になる、ということだ。
必要なことは、ライバルたちより前でチェッカーフラッグを受けることなのだ。
決勝レースは、シーズン最長となる500マイル=約800km。その特別なレギュレーションとして、4度のドライバー交代が義務づけられている。通常は1度だけだが、それが今回のレースでは最低でも4回はピットインすることになるのだ。つまりチームは戦略的に、ドライバー交代のタイミングや、同時に行われる給油やタイヤ交換の内容を、幅広いスケジュールの中から組み立てることができるのだ。
800kmという長い距離は、K-tunes Racingにハンデを乗り越えるべく、チャレンジするプランを数多く検討し、それを実現するための時間を与えてくれるに違いなかった。

予選Q1、阪口晴南選手がアタックしたものの、結果は25位。これでも午前中のプラクティスよりはタイムアップしたのだが、ライバルたちはさらにタイムアップしていたのだ。そしてこの予選順位は、昨年SUGOの24位を超え、チームとして最悪の結果となった。単純な速さが求められる予選では、ストレートに出てしまう。
雨が降り、パワーの重要性が低くなれば予選Q2進出の可能性もあったかもしれない。しかし、富士スピードウェイは真夏の日差しが降り注ぐ、熱気の中にあった。そういう意味では予選結果は順当なもので、チームもドライバーもネガティブな空気はなく、翌日の決勝レースのためにすぐにマインドチェンジしていた。

あらかじめ用意していたいくつかの選択肢の中から、上位入賞へチャレンジするための戦略を選ぶ。予選順位やそのタイム、あるいはタイヤの磨耗や燃費といった要件をトータルで考慮し、ベストな戦略を探っていく。果たして、実行された作戦は、1回目のピットストップを1周終了後に行うというものだった。
予想される周回数は160周+α。それを5等分すれば32周という計算で、これが一般的なルーティンになる。それに対してK-tunes Racingは、スタートしてすぐにピットストップを行い、残りを40周ごとにドライバー交代していく。レース全体を通じて他のマシンよりも早いタイミングでピットワークをしていくことになる。当然ピットストップ直後は大きなタイム差が生じる。しかし、そうしたタイミングでセーフティカーが入ることになれば、その差はゼロとなり、ピットストップ1回分のタイムロスが逆にアドバンテージになるのだ。

富士スピードウェイでの1回のピットストップでのロスタイムは、給油+タイヤ4本交換まで含めると105秒前後。これはGT300クラスの1周分のラップタイムに匹敵する。つまりピットストップを1回多く済ませてセーフティカーの後ろに同一周回で並べば、ライバルたちに1周分のアドバンテージができあがるのだ。

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2019.8.3-4 富士スピードウェイ攻めた戦略でチャレンジしたものの
勝機を掴むことはできずに15位に終わる

決勝レース、スタートドライバーは新田守男選手。スタートした後、1周目でピットレーンにマシンを入れ、阪口晴南選手へとドライバー交代。同時に給油したものの、タイヤは交換しなかった。最小限のタイムロスでコースに戻ったが、当然順位は最下位、29位となった。もちろん、このままスムーズにレースが進行していけば、順位を大きく挽回することはできない。

阪口晴南選手持ち前の速さは、トップグループのマシンには及ばないものの、トップ10のマシンと同等。周囲に同じGT300クラスのマシンが居ないこともあって、前のマシンにどんどん近づいていく。その走りは第2戦富士でポジションを大きく上げた走りを思い起こさせるに十分だった。
だが戦略的にはこのタイミングでセーフティカーが入ることが、チームにとって最上の結果に違いない。しかし時間とともに少しずつポジションを上げていく阪口晴南選手の走りに、水を差すような事態は起きない。どうやら800kmという長距離だけに、多くのチーム&ドライバーはいつもより慎重にレースをスタートさせたようだった。

結局何も起こらないまま41周目に、新田守男選手へとドライバー交代。16位だった順位は、そのピットストップによって再び25位へ。つまりスタート時と同じだ。それでもまだ他のマシンよりもピットストップを1回多く消化している事実は変わらないが、しかしペースが厳しいことですでに周回遅れになってしまっていた。
レースが動いたのは66周目、GT500クラスのマシンがクラッシュしたことによってセーフティカーが入った。つまり新田守男選手のパート後半であり、2度目のピットストップを終えたマシンも半数以上だった。つまり、当初の戦略プランは有効なタイミングではなかったのだ。

レースはその後、クラッシュや火災など、次第にハードな展開になっていく。だがしかし、K-tunes Racingには有効なものにはならなかった。チャレンジした戦略は、成功しなかった。  しかし最終的に15位でフィニッシュすることになった。スタートよりも10ポジション上げることができた。それは4度のピットストップをノーミスで完遂したメカニックたちのガンバリ、レースが進むほど順位回復が難しいことが明らかになるにも関わらず最後までレースを戦い続けたドライバー、そうしたチームの胆力が生み出した結果に違いない。

今回の15位、シリーズポイントを得ることはできなかったが、しかしK-tunes Racingがまた一歩進化した、記念すべきレースになるのかもしれない。

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