2021.4.10-11 岡山国際サーキット2年ぶりの地元・岡山での開幕戦
6位入賞で幸先の良いスタートを切る
ついに開幕した2021 AUTOBACS SUPER GTシリーズ。昨シーズンとは異なり、これまでのレギュラーシーズンと同様に、岡山国際サーキットからのスタートとなった。昨シーズンは開催がキャンセルされているため、2年ぶりの開催となった。
2年前の岡山大会では、雨が降りしきる天候の中、30周でレースは打ち切り。予選2番手でスタートしてトップを奪った新田守男選手が、そのままトップでチェッカーを受けた。初めての地元開催での優勝というだけでなく、SUPER GT初参戦の阪口晴南選手にとって記念すべき初優勝となった。
SUPER GTが開催されるサーキットは最大でも8。2021年シーズンでは6となっていて、ほとんどのチームには地元開催がない。K-tunes Racingは地元開催での優勝という、最上の結果を残すことができた。
今シーズンのチーム体制は、影山正彦チーム監督に、新田守男選手と阪口晴南選手と変わらない。しかし開幕戦は変更を受けることになった。それは阪口晴南選手はGT500クラス、#37 KeePer TOM'Sをドライブすることになったためだ。入国できない外国人ドライバーの穴埋めのための処置だが、将来が有望視されている阪口晴南選手にとってはステップアップのための重要なステージになることだろう。
その代役としてK-tunes Racingの96号車のステアリングを握るのは、平良響選手となった。2020年のFIA-F4を圧倒的な強さでチャンピオンを勝ち取った、若手ドライバーだ。阪口晴南選手よりも1歳若い。すでに岡山、富士での2度の公式テストでマシンを走らせていて、マシンの習熟度は十分といっていい。
2度の公式テストでの大きなテーマは、タイヤのチェックだった。2020シーズンの苦戦は新たに使用することになったダンロップタイヤへのデータ不足、ノウハウ不足だったことは間違いない。タイヤはモータースポーツにおいて、最も重要なファクターのひとつで、SUPER GTではラップタイムの速さと高耐久性の両方が高いレベルで求められる。形態は耐久レースではあるが、実際にはスプリントレースが長時間続いているようなレースになっているため、耐久性だけでなく速さも同時に求められる。
速さを出すための使い方、性能を維持するための運用方法、そしてマシンとのマッチング。2020シーズンでは、それらすべてが不十分だったのだ。
マシンは引き続きLEXUS RC F GT3を使用。ただしマシン自体は新たに導入した新車へとチェンジしている。今シーズンRC F GT3から、独自のGT300規格(旧JAF-GT)となるGRスープラへと乗り換えるチームが多く、RC F GT3は少数派となってしまった。これについて末長一範チーム代表は「世界的にも人気があるGT3マシンで戦うことを選びました。スープラも面白いとは思うんですが、世界に通じるマシンでレースを戦っていきたい、ということです」と語っている。つまり拡大していくことが予想されるGRスープラではなく、あえて新車のRC F GT3を導入した、ということなのだ。
カラーリングも更新された。ホワイト/グレー/ブラックのヘリンボーン模様から、滑らかなグラデーションとなった。フロント側がホワイト、リヤ側がブラックというのは変わらない。
公式予選、予選Q1は新田守男選手が担当。まだ路面温度は20℃前後と低い中、コースインした新田守男選手は2周を使ってゆっくりとタイヤをウォームアップ。狙い通りにアタックラップで1分26秒405の好タイムをマーク、ギリギリの8位ながら予選Q2への進出を決めた。
その予選Q2は、平良響選手にとってSUPER GT初の予選。新田守男選手のフィードバックによりマシンのセッティングを変更、そしてドライビングへのアドバイスも受け、1分26秒108までタイムアップを果たし、予選7位を獲得した。ルーキーとして、最上位となった。
岡山国際サーキットらしい、タイム差の少ない接近した予選結果。決勝レースでは白熱したバトルシーンが数多く見られるのか?
結果からいうと、レース展開は全体として、とても落ち着いたものだった。
7番グリッドからスタートした新田守男選手は、その順位を維持したまま周回を重ねていく。ただしレースペースはトップグループに対して0秒5前後遅れていて、少しずつギャップは拡がっていく。コース上でストップしたマシンが出て、8周目にセーフティカーが入り、そのギャップはキャンセルすることができた。しかし11周目に再スタートとなると、同様にギャップが開いていくことに。
それでも、昨シーズンのように10周にも満たないうちにタイヤのグリップが低下し、急激にペースが悪化するようなことは起きない。オーバーテイクが難しい岡山国際サーキットということもあるが、新田守男選手は後続のマシンを無理なく抑えている。
そして28周目、ライバルたちよりも早いタイミングでドライバーチェンジを行う。初めてのドライバーチェンジという緊張感もあったが、平良響選手はドライバー交代というハードルも上手く超えた。
アクシデントは平良響選手がコースインしたタイミングで発生した。コースオフしてクラッシュしたマシンがコース復帰、破損していたボディカウルをバックストレートで破断させコース上に大量に、広範囲にバラ蒔いてしまったのだ。細かくなった大量のパーツをコースマーシャルの手でひとつひとつ回収するのは、ある程度の時間が必要になる。
おそらく全てのチームがセーフティカーを予想したハズ。セーフティカーのタイミングでドライバー交代を済ませれば有利になり、できるだけ早いタイミングで済ませれば順位が上位になる。しかし多くのマシンが一斉にピットインすれば、スペースがタイトな岡山国際サーキットのピットレーンは、大混雑することも同時に予想できた。そして予想通りの大混乱が起き、大きく順位が入れ替わった。
ドライバー交代を済ませたばかりのK-tunes Racingは、そうした混乱とは無関係だった。瞬間的に20位まで落とした順位も、再スタートを切る前に実質6位にまで回復させることができた。アクシデントによってポジションを取り戻した、まさにベストなタイミングでのピットインだったのだ。
再スタートすると、平良響選手はルーキーとは思えないほど安定した走りで、上位を狙う。しかし、少しずつ離されはじめ、結果として単独走行になっていった。そしてSUPER GT初レースとなった平良響選手は、みごと6位でチェッカーを受けた。
K-tunes Racingは開幕戦で5ポイントを獲得。幸先の良いスタートを切ることとなった。
コメント
影山正彦 チーム監督
「いい結果と言っていいのか判りませんが、正直ここまでクルマとタイヤをできる限りの仕上げをして開幕戦を迎えましたが、6位という結果を出せたので、正直ホッとしています。チームワーク、チームの和を高めることができたと思うので、今シーズン期待が持てるスタートが切れたと思います」
新田守男 選手
「レースラップは想定していた通り、あまり良くなかったですね。コンスタントにレースを走ることはできましたが、まだ望むレベルにはまだ達していないですね。その問題点をこれから少しずつでも修正していきます」
平良響 選手
「同一周回のドライバーを抜くことはなくて、前のマシンに追いつけるようなペースはありませんでした。まだまだ足りない部分もあるので、今後開発を進めていけばいい結果が得られると思います。ノビシロあります」