2021.8.21-22 鈴鹿サーキット期待された鈴鹿も予選のトラブルに始まり
今季ワーストのリザルトに終わる
K-tunes Racingは8月21日(土)〜22日(日)、第3戦SUZUKAを迎えた。過去4度のレースで優勝2回を記録した相性の良いコースだけに、チームの内外で期待感も高まっていた。鈴鹿だからこそ、開幕戦以来のポイントゲット(=10位以内の入賞)が可能だろう、もしかすると表彰台に立つシーンが目にできるかもしれない。ただし、妄想は確証が薄いほど、膨張しやすい。
鈴鹿サーキットのグランプリコースは、マシンのバランスが重要なコース前半のテクニカルコースと、パワーが求められるハイスピードなコース後半が組み合わされた、ドライバーの技術が問われるドライバーズコース。現在SUPER GTが開催されている国内6つのサーキットの中で、最もLEXUS RC F GT3の特性にマッチしたコースであり、だからこそ最上の結果を残すことができたのだ。
だが、その期待は決勝レースがスタートする前までに霧散することになる。
最初に驚いたトピックスは、今シーズン新田守男選手のパートナーとして、ステアリングを握っていた平良響選手が、レースウィークに入って体調不良となり発熱、SUPER GTのガイドラインによって、出場できなくなったことだ。(その後に新型コロナウィルスの陽性反応が確認されている)
そのためK-tunes Racingは、その代役となるドライバーを急遽オファーする必要があった。白羽の矢が立ったのは、小高一斗選手。平良響選手よりは1つ年上だが、まだまだ若手のドライバー。子供の頃からカートで戦い、16歳では特認で4輪レースにデビューし、FIA-F4や全日本F3へとステップアップ、その実力を認められて今シーズンはヨーロッパのWECに参戦している小林可夢偉選手の代役としてスーパーフォーミュラに参戦している。
SUPER GTへは2019年に初参戦、2020年シーズンはレギュラードライバーとしてフル参戦している。そしてポールポジションを2度獲得するなど、その速さをアピール。今シーズンはチーム体勢の変更からレギュラーシートを得ることができなかった。
K-tunes Racingとしては、タイムリミットが迫る中、思いの外、有力なドライバーを得ることができたと言っていいだろう。
土曜日の午前中、公式予選を前にした公式練習では、マシンやタイヤのチェックを含めて、順調にプログラムが消化されていった。ベストタイムも6番手。久しぶりにレースを戦えそうな空気が流れていた。
予選Q1、ステアリングを握るのは新田守男選手。ピットロードを出て、コースインした新田守男選手がブレーキの異変を無線で伝えて来た。もちろんブレーキに違和感がある状態で、タイムアタックなどできるわけもない。新田守男選手はそのままマシンをピットに戻した。
左リヤのブレーキにトラブルが発生していたのは、すぐに発見できた。しかし予選Q1の間に修復して、マシンを送り出すことは不可能だった。その結果、予選Q1はノータイムに終わった。これはK-tunes Racingとしても、初めての経験だった。
そのため、96号車は最後尾からのスタートということになってしまった。
決勝レースの直前、ウォームアップ走行は燃料を満タンにしたフルタンクでのチェックを行うことが多い。そのウォームアップで新田守男選手はトップタイムをマークする。まるで予選の鬱憤を晴らすかのように。
しかしテクニカルなコースである鈴鹿サーキットは、SUPER GTではオーバーテイクが難しい。最後尾の29位からスタートし、果たしてどこまで追いあげることができるのか?
スタートドライバーは、いつものように新田守男選手。8月の鈴鹿というのに、秋のように涼しかったレースウィークだったが、決勝レースが始まる頃には雲も引き、強い日差しがサーキット全体を明るく、そして熱していた。それでも路面温度は想定されていたよりも10℃前後低い。
ウォームアップでクラッシュした18号車は決勝レースをスタートできず、またチャンピオンマシン56号車がコースサイドにマシンを止めるなど、2周目には24位へとポジションを上げたものの、波乱を予感させる序盤だった。
そして4周目、GT500の64号車がシケインでクラッシュ、マシンから出火もあり、セーフティカーとなった。しかしスポンジバリアの修復などにも時間を要し、セーフティカーが長引く。その時点では23位。8周目に再スタートに向けてクラス別の整列が行われ、10周目にはピットロードがオープンになった。
ドライバー交代には周回数が足りないが、下位のチームはタイヤ交換や燃料給油のためだけにピットへマシンを迎い入れた。そのままスタートドライバーで引っ張り、終盤にドライバー交代とピット作業をして追いあげる、といった戦略もアリだ。しかもその間に再びセーフティカーが入れば、タイムロスは帳消しになる。
しかし新田守男選手はそのままコース上に残り、再スタートを待つことになった。チームとの無線交信が上手くいかなかったためだ。
そして11周目、19位で再スタートとなった。ペースは悪くないものの、やはりオーバーテイクは難しく、簡単にポジションを上げることはできない。結局17周目、18位で先陣を切ってドライバー交代へ。タイヤ交換、燃料給油、そして小高一斗選手への交代を終えて、27位でコースへ復帰した。
残りは30周以上という長丁場。小高一斗選手は周囲のマシンよりも1秒前後速いペースで周回をしていく。21周目に26位、22周目に25位と、ひとつずつ着実にポジションを上げていく。まだ上位のマシンを中心に、ドライバー交代が行われていない。そして折り返し点ともいえる25周目、22位へとポジションを上げた。
35周目、全てのマシンがドライバー交代を終えると、小高一斗選手は17位となっていた。しかしすでに20周近くを走っていたタイヤは、すでにグリップダウンが始まっていた。レースペースは急激に苦しくなり、一転して防戦となっていった。遅いタイミングでドライバー交代したマシンはフレッシュなタイヤでペースも良く、抑えきることはできない。
他のマシンのトラブルによって一時16位に上げることはできたが、結局17位でレースを終えた。データを振り返ってみると、確かに下位の中ではペースが良かったものの、上位陣とのタイム差は大きかった。ベストラップはトップのマシンと比較して2秒もの大差があったのだ。これでは、たとえ予選上位を獲得したとしても、レース結果はそう大きく変わらなかった可能性が高い。
期待された鈴鹿ラウンド、しかし実際には今シーズン最も悪いリザルトとなってしまった。得意とするコースだけに口惜しさもひとしお。それをバネに、次なるステップへの進化につなげたいところだ。
コメント
影山正彦 チーム監督
「予選でああいったトラブルが出てしまい、不本意な結果となってしまいました。まずはそういった部分をしっかり反省して、改善していかないとダメですね。決勝レースはやはりレースラップが悪く、厳しいレースでしたね」
新田守男 選手
「今のボクたちの課題が出たレースでしたね。やっぱりレースペースが良くないので、得意の鈴鹿でも上位で戦える速さがありませんでした。そのあたりを改善していって、勝負できる形にしていきたいですね」
小高一斗 選手
「新田選手からいい形でバトンを受け取って、追いあげたんですが、最初の10周は良かったんですが、その後はタイヤが苦しくなって、最後はポジションを守るのが精一杯でした。ペースコントロールが必要だったかもしれませんね」