2023.5.3-4 富士スピードウェイ予選10位を獲得し上位進出が狙えるレース
最後まで戦い今季初入賞となる9位で終える
悪天候に左右された波乱と混乱の開幕戦から一転、第2戦富士は快晴の下で開催された。やはりモータースポーツにはまぶしい太陽が似合う。
雨の中で苦戦したダンロップタイヤだが、ドライでの予選一発の速さでは昨シーズンから定評を得ている。実際に昨年の第2戦富士でも予選3位を獲得している。今シーズン用に開発された新しいダンロップタイヤの進化によって、その速さを維持しながら耐久性を高めている、というのが快晴だった岡山公式テストで判明している。
予選が行われようとする午後に入って、富士スピードウェイは風が強くなっていた。ストレートは追い風となり、好タイムが出やすい状況となった。
Q1を担当したのは高木真一選手は、富士で9勝を挙げている富士マイスターだ。まずはQ2進出を目指してアタックに入る。記録したタイムは1分35秒754。これは午前中の公式練習でのベストタイムよりも約0.7秒上回るタイムで、最終的に5位となった。
続くQ2では、高木真一選手からのフィードバックを受けた新田守男選手が快走する。タイヤは高木真一選手がミディアムだったのに対して、新田守男選手はフィーリングの良さを得ていたハードを装着。1分35秒601にタイムアップし、10位で予選を終えた。ポールポジションの56号車GT-Rが1分35秒114だったので、その差は決して大きなものではなかった。
2022年シーズンは3戦だったが、2023年シーズンからは5戦へと450kmレースが増えた。半数以上になったわけで、当然450kmレースのフォーマットでの競争力が問われることになる。チャンピオンを争うにはしっかりと結果を残し、次の450kmへとつなげたいところだ。
300kmのレースと450kmのレースでは、レース戦略が当然変わってくる。300kmであれば1度給油すれば最後まで走り切ることができるのだが、450kmとなると燃費の厳しいマシンでは1度の給油では本当にギリギリとなる。LEXUS RC F GT3も、その1台だ。重量級のGT3マシンはそうなる。
だから1度だけの給油で済まそうとすると、スタートからレースの半分くらい、燃料ギリギリまで走らなければならない。予選で使用したタイヤでレースの半分までを走るのは、タイヤの耐久性や性能低下もあり、これまた重量級のGT3マシンに厳しい。
そうしたハンデキャップを踏まえたのか、今回のレースでは2度の給油が義務化されていた。給油量によって給油時間に影響は出るものの、ピットインすることによるロスタイム分は全車イーブンという計算になる。
周回数はGT500が100周なので、GT300では95周くらいがMAXになると予想される。2度の給油を均等に割ると32周前後ということになる。
そういった条件を加味した上で、K-tunes Racingの戦略は定番的なものが選択された。
スタートドライバーは新田守男選手。スタートタイヤはBが指定され、新田守男選手が予選で使用したハードだったため、温まりがやや不利ではあった。そのオープニングラップでポジションをひとつ上げ、9位でストレートに戻って来た。2台にオーバーテイクを許したものの、前方でスタートした中で2台が1コーナーで軽い接触によってスピンして最後尾まで落ち、そして1台が1周目終了時にピットに入り1度目の給油を行ったためだ。
今回の第2戦富士でのアクシデントシーンは、この1周目の1コーナーだけだった。つまりFCYもセーフティカーも出番はなく、クリーンなレースが展開された。
1周目で給油したのは2号車GRスープラ。いわゆるスプラッシュと呼ばれる、短時間の給油でタイヤもドライバーもそのままで、コースに復帰した。満タンでスタートしたとすれば、コースインとフォーメイションラップが合計3周、そしてスタートして約1周で消費したわずかな量しか入らない。この後はレース中間地点まで走り切り、2度目のピット作業でドライバー交代も実施すれば、ゴールへと向かうことができる。ピットでのロスタイムが最小となる計算だ。
早めのタイミングでスプラッシュを行ったのは、2号車以外に、5号車86、52号車GRスープラ、25号車GRスープラといったGT300(旧JAF-GT)マシンたちで、軽量で燃費に優位な特性を活かした戦略を採用した。
K-tunes Racing 96号車は、ややペースに苦しみながらも、スプラッシュを行った上位のマシンもあり、10周目には7位へとポジションを上げた。
15周目になると、4号車AMG、7号車BMWといったGT3マシンも早めのタイミングでの最初のピット作業を行った。しかし全体から見ると、そうした変則的なピットタイミングを採用したチームは少なく、基本的に均等な3分割に近いスタイルが多数だった。これはGT500も同様となっていた。
28周目、K-tunes Racing 96号車はピットイン。ドライバー交代と給油、タイヤ交換を行った。ニュータイヤと満タンの燃料で、高木真一選手がコースに復帰する。ここからロングランで追い上げることになる。
そのため最初の3〜4周はあえてペースを抑え気味にし、タイヤの負担を減らす。一般的にタイヤは冷えている時のほうがダメージが大きいので、しっかりと温めてからパフォーマンスさせるほうが持ちがいい。ベテランらしくタイヤマネージメントでも抜かりはない。
35周からはこの日のベストラップを更新し続けながら、前のマシンを追撃していく。そして50周目、2度目のピット作業をするマシンが何台か出たこともあり、8位へとポジションを上げた。55周目には6位、63周目には4位、そしてついに67周目に1位となった。もちろん96号車にはもう1度給油が残っており、あくまで暫定ではある。それでも久しぶりの1位という表示は印象的だった。
2度目の給油は74周目。レースは残り20周以下。最小限の燃料補給と、左側の前後タイヤ2本交換を行い、高木真一選手が再びコースへ。ポジションは10位、スタート時と同じ位置に戻った形だ。
77周目に上位を走っていた11号車GT-Rがピットインすると、9位へとポジションアップ。高木真一選手は周囲のマシンよりも速いペースで追い上げていく。前を走る31号車LC500hに迫るが、オーバーテイクするまでには至らない。最終的に9位で、今シーズン初入賞となった。
優勝したのは56号車GT-Rで、31周目と61周目にピット作業を行うという定石通りの戦略で、ポール・トゥ・ウィンを勝ち取った。燃費面で不利なGT3マシンであっても、十分な速さがあれば優勝につなげることができるという、K-tunes Racingにとっても大きな収穫となるレースとなった。
リザルト2023 AUTOBACS SUPER GT Round.2 FUJI
05/04 決勝レース 富士スピードウェイ 天候:晴れ 路面:ドライ
Pos. | Car No. | Machine Driver | Laps | Time / Gap | Best Lap | Tire | SW |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 56 | リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R NISSAN GT-R NISMO GT3 J.P.デ・オリベイラ/名取鉄平 |
93 | 2:35'03.979 | 1'37.456 | YH | 3 |
2 | 2 | muta Racing GR86 GT TOYOTA GR86 堤 優威/平良 響/加藤 寛規 |
93 | 0.579 | 1'37.323 | BS | 0 |
3 | 52 | 埼玉トヨペットGB GR Supra GT TOYOTA GR Supra 吉田広樹/川合孝汰 |
92 | 1 Lap | 1'37.328 | BS | 18 |
4 | 65 | LEON PYRAMID AMG Mercedes AMG GT3 蒲生尚弥/篠原拓朗 |
92 | 1 Lap | 1'37.562 | BS | 48 |
5 | 10 | PONOS GAINER GT-R NISSAN GT-R NISMO GT3 安田裕信/大草りき |
92 | 1 Lap | 1'37.441 | DL | 0 |
6 | 88 | JLOC ランボルギーニ GT3 LAMBORGHINI HURACAN GT3 小暮卓史/元嶋佑弥 |
92 | 1 Lap | 1'37.190 | YH | 0 |
9 | 96 | K-tunes RC F GT3 LEXUS RC F GT3 新田守男/高木真一 |
92 | 1 Lap | 1'37.911 | DL | 0 |
ファステストラップ 1'37.190 #88 JLOC ランボルギーニ GT3/元嶋佑弥
※タイヤ BS=ブリヂストン DL=ダンロップ MI=ミシュラン YH=ヨコハマ
コメント
影山正彦 チーム監督
「本当にポイントを取るのは大変ですね。でも今日はチーム一丸となって、ミスもなく戦うことができ、いいレースだったと思います。もちろん細かな部分で削れる部分はあるので、そういったところをもう一度見直して、チームのレベルアップを図りたいです。次は得意の鈴鹿ですから、自力で表彰台を目標に、もう一段上の結果を目指したいです」
新田守男 選手
「スタートの時の混乱で追突されたりして、何台かに先行されてしまって、それがもったいなかったかな、と思います。その後もマシンのバランスが良くなくて、ペースを上げることができませんでした。もっといい位置で走れると思っていたんですけど。ただチームとしてはアジャストして高木選手にフィードバックできたのが、結果につながったんだと思います」
高木真一 選手
「マシンはイメージ通りの良いバランスで、最後まで変わらず走ることができました。給油の時に、左側のタイヤだけの交換を提案したんですけど、残念ながらオーバーテイクまではもう少し足りませんでした。今あるモノでは精一杯の速さを引き出せたと思いますが、さらにもうワンランク上に行ければ、優勝争いに加わることができると思います」