2023.6.3-4 鈴鹿サーキット予選Q1敗退で21位からのスタートとなったが
入賞まであと一歩に迫ったがペナルティに沈む
SUPER GT第3戦の舞台は鈴鹿サーキット。ドライバーにとってチャレンジングなコースレイアウトは、世界でも屈指のテクニカルコースとして有名で、マシンには高いハンドリング性能が求められる。それはつまりLEXUS RC F GT3にとって優位なサーキットであるといえる。RC Fをベースにレーシングマシンとして根本的に手を加えられたGT3マシンは、名だたるヨーロッパのスーパーカーを相手にしても、ハンドリングで優位にあるのだ。
前戦富士で今季初入賞を果たし、その勢いを鈴鹿につなげ、結果を求めたいレースということになる。
K-tunes Racingは450kmとなるレース距離を、前戦富士を含めて、比較的オーソドクスな戦略で戦ってきた。義務となる2回の給油タイミングを均等に、つまりレースを3分割した形だ。燃費の良いマシンでは1回の給油で走り切れるケースもあるのだが、RC F GT3では基本的には無理。2度の給油ではそれぞれ十分な量が必要になる。つまりトリッキーな作戦は取りにくいのだ。
またコースレイアウトからしてタイヤへの負担は大きい。新しいダンロップタイヤの耐久性は着実に進歩しているものの、実際のレースではまだ十分に確認できていない。
前日の金曜日、台風2号の影響で近畿・東海地区では豪雨が襲い、一部地域では風水害が発生した。鈴鹿はそれほど強い雨ではなかったようだが、それでもサーキットの路面に付着していたハズのラバーは流れ、クリーンな状態になっていた。それがタイヤのパフォーマンスにどのような影響が出るのか??
2ポイントを獲得したため、今回のレースでは6kgのサクセスウエイトとなった。ランキング上位のマシンには70kgものウエイトが乗っていることを考えると、影響はそう大きくはない。
午前中の公式練習、27台のGT300マシンの中で11番手というタイムだった。予選Q1では2組に分けてそれぞれ上位8台が予選Q2へと進めるわけだから、順当にいけば問題ない。ただし得意なサーキットという割りには、やや低調なタイムに終わっていたのは決勝レースを見据えたチェックを重視していたためだ。そしてドライバーはマシンのバランスの良さに、不安を持っていなかった。
予選Q1のA組、新田守男選手が担当。決勝レースを見据えたハードタイヤを選択した。
最初のアタックでは1分58秒532、その時点で6位。このタイムでは不十分と判断し、新田守男選手は連続でアタックに向かった。しかしタイムアップはならず、予選Q1は11番手となり、Q2へと進むことができなかった。8位に入るためには約0.5秒も足りなかった。
得意としているコースでありながら、十分なタイムを出すことができなかった。「フィーリングは悪くないが、タイムが出ない。普通では理解しにくい状況ですが、そういうことがマレにある」と影山正彦チーム監督は言う。
レースの結果を求めるなら、予選一発の速さよりも、決勝レースでの速さだ。公式練習でしっかりとチェックした成果を出し、上位入賞を狙うしかない。
予選21位。かなり後方からのスタートとなる。燃費とタイヤの磨耗を考えて、よりベターな戦略でひとつでも前のポジションへと進めたい。希望の光は、レースペースは悪くないという点だ。
燃費に優れたマシンでは、スタートから早いタイミングで少量の給油を行う、スプラッシュという作戦が取れる。混雑するスタート直後にピットに入り、車群から離れることで自分のペースでレースを進めることができるからだ。今回のレースでもスタート直後にスプラッシュするマシンが何台か、あった。そして5周目、96号車が15位となっていたタイミングで、給油とタイヤ交換を実施した#18NSXがコース復帰直後にホイールが外れるトラブルが発生、FCYそしてセーフティカーとなった。FCYもセーフティカーも、SUPER GTではピットインすることができない。
問題は何周目に解除となるのか?? 絶好の給油タイミングとなる可能性もある。できるだけ後ろのほうが都合は良い。そして11周目でセーフティカーは解除され、同時に96号車はピットへ。タイヤのコンディションは良好という判断で、給油だけでコースへ。
次のピット作業ではドライバー交代とタイヤ交換、そして給油となる。燃料面で最後まで走りきれる周回数まで引っ張れれば、ベストではある。
新田守男選手のペースは悪くない。ピットインするマシンもあり、22位まで落ちたポジションを19周目には17位、24周目には14位と回復していく。しかしその頃から2分2秒台だったペースが、2分5秒台、そして2分7秒台となっていく。タイヤの磨耗だろう。
30周目、マシンをピットに呼び戻し、ドライバー交代とタイヤ交換、そして給油を行う。ただし残り40周以上を走り切るには燃料が足りず、長いFCYやセーフティカーなどが入らない限り、もう一度給油しなければならない。
高木真一選手は2分2秒台を切るペースで、25位にまで落ちた順位から追い上げていく。44周目には17位、48周目には14位と入賞圏内が見えて来る。だが最後まで燃料は持たない。
そして運命の54周目、130Rの出口で多重クラッシュが発生。その直後を通過した高木真一選手は、ピットからの指示により反射的にピットレーンへ。大量にコース上に散乱したパーツの破片からみて、最低でもセーフティカー、もしかすると赤旗中断か?? どちらにしても不足している燃料を補給するのに、絶好のチャンスに見えた。
セーフティカーというアナウンスがあり、今回のピット作業時間によるダメージを最小限に抑えることになった。
その時ピットでは急遽タイヤ交換という指示も出た。96号車は素早く用意されたニュータイヤを装着し、十分な燃料補給を受け、高木真一選手はコースへと復帰していった。ニュータイヤを得たことで残り20周ほどのラストスパートが可能な状況に、高木真一選手は気持ちが高まっていた。
レースはセーフティカーから赤旗中断となり、ストレート上にマシンたちが並んだ。その後マシンがクラッシュした部分のガードレールなどの保護設備が短時間では修復できないことが判明、レースを続行することができず終了となった。
赤旗で終了した場合、レース結果は1周前の順位となる。つまりピットレーンで通過したコントロールライン上が、96号車のゴールライン。12位というのが、順位だった。
しかしピットレーンに入る前にセーフティカーがアナウンスされていた、という判定を受けることに。一般的なレースではセーフティカー中にピットインすることができるが、SUPER GTでは禁止されている。そのためペナルティピットストップ60秒という裁定が下り、とはいえレースはすでに終了し消化できないため、レース結果に100秒加算となった。最終的な順位は22位となった。
リザルト2023 AUTOBACS SUPER GT Round.3 SUZUKA
06/04 決勝レース 鈴鹿サーキット 天候:晴れ 路面:ドライ
Pos. | Car No. | Machine Driver | Laps | Time / Gap | Best Lap | Tire | SW |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 7 | Studie BMW M4 BMW M4 GT3 荒 聖治/柳田真孝 |
54 | 1:59'31.713 | 2'01.391 | MI | 15 |
2 | 2 | muta Racing GR86 GT TOYOTA GR86 堤 優威/平良 響/加藤 寛規 |
54 | 0.607 | 2'00.781 | BS | 45 |
3 | 52 | 埼玉トヨペットGB GR Supra GT TOYOTA GR Supra 吉田広樹/川合孝汰 |
54 | 1.383 | 2'00.717 | BS | 51 |
4 | 56 | リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R NISSAN GT-R NISMO GT3 J.P.デ・オリベイラ/名取鉄平 |
54 | 15.341 | 2'00.364 | YH | 66 |
5 | 11 | GAINER TANAX GT-R NISSAN GT-R NISMO GT3 富田竜一郎/石川京侍 |
54 | 19.222 | 2'00.655 | DL | 0 |
6 | 61 | SUBARU BRZ R&D SPORT SUBARU BRZ GT300 井口卓人/山内英輝 |
54 | 24.327 | 1'59.740 | DL | 0 |
22 | 96 | K-tunes RC F GT3 LEXUS RC F GT3 新田守男/高木真一 |
54 | 2'39.726 | 2'01.367 | DL | 6 |
ファステストラップ 1'59.740 #61 SUBARU BRZ R&D SPORT/山内英輝
※タイヤ BS=ブリヂストン DL=ダンロップ MI=ミシュラン YH=ヨコハマ
コメント
影山正彦 チーム監督
「21番手という残念な位置からのスタートでしたが、今、自分たちができることは最大限、レースの中でやることができたんじゃないかと思います。3度のピット作業でも、ミスすることなくチーム一丸となって戦えました。最後のペナルティはちょっとタイミングが悪かったな、という印象ですね。次戦しっかりと戦えるように、準備をしていきたいです」
新田守男 選手
「決勝ではレースペースは悪くなくて、しっかりと戦うことはできました。最後のほうは一気にペースが悪くなったんですが、原因はスローダウンしていたGT500のマシンを追い越す時にタイヤカスを拾ってしまったからですね。それがなければ、もう少し走れたかな?? 今回見えた課題もあるので、シーズン後半への戦いに向けて、ひとつひとつ対処していきたいです」
高木真一 選手
「今何位で走っているのか判らないまま、目の前に現れたマシンを1台ずつ抜いていく、という感じでした。結構な台数を抜いたつもりなんですけど…。最後の赤旗が出る2〜3周前からタイヤが厳しくなっていたので、絶好のタイミングでピットに入ったつもりだったんですが…。ニュータイヤに交換したので、最後の追い上げを楽しみにしていたのですが、残念です」